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山月記 - 成功時にこそ読みたい一冊

青空文庫アプリで読みたい文庫10選

中島敦作『山月記』

やっと涼しくなってきて、夜空も美しさを増してきました。中秋の名月は過ぎてしまいましたが、10月20日は栗名月とも呼ばれる十三夜です。まんまるな月もいいですが、これから満ちていく十三夜の月も趣きがあっていいものです。そんな煌々と照る月の下で、読みたいのが中島敦作の『山月記』です。
 
本作の主人公である李徴は、才気にあふれ気位も高かったため、地位の低い役人暮らしを嫌い詩家を目指します。しかし、挫折し再び役人になった時、当時、李徴が見下していた者たちの下で働くことになってしまうんです。そんな状況に耐え切れなくなった李徴は、やがて精神を病み行方不明になってしまいます。

ですが、実は彼は人食い虎に成り果て生き延びていたのです。現実でも学生時代に優秀だった人間が、社会に出てからは成果を上げられないというのは、よくあることです。
また、たとえ一時的に成功をおさめても、さらに優れた人間が出現し、鼻をへし折られる事態も珍しくはありません。本作は幻想的なファンタジーとしても楽しめますが、挫折した際、李徴のように異形の物にならないようにという、自戒を込めて読むのもいいかもしれませんね。

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この作品を読むには青空文庫プロバイダーと青空読手の二つのアプリが必要です。詳しくは青空文庫プロバイダー(青空プロバイダ - オフラインでも読書が楽しめる)、青空読手(青空読手 - セピア調がしっくりの秋読書アプリ)のレビューに解説してあります。

或阿呆の一生 - 芥川の自伝でも遺書でもある有名作品

青空文庫アプリで読みたい文庫10選

芥川龍之介作『或阿呆の一生』
警視庁の発表によると、日本の自殺者は12年連続で3万人を越えてたそうです。これを重く見た政府は、9月に自殺対策の専門チームを発足しました。早く効果が発揮され自殺が減って欲しいものですが、厳しい社会情勢の中では、なかなか難しいかもしれませんね。
 
残念なことに、文豪の中にも自殺した方は多いです。そんな惜しむべき作家の一人が芥川龍之介です。存命していたら、さらなる名作が世に送り出されていただろうと思うと、死と才能が本当に残念でなりません。今回はそんな彼の作品の中から、『或阿呆の一生』をご紹介します。
この作品は芥川龍之介の死後に発表され、小説を模した彼の自伝であり、遺書だと言われています。さて、物語りは五十一の短文で構成されています。それぞれに別の場面でありながら、続けて読んでもまったく違和感がなく、すべてが繋がっているかのような錯覚に陥ります。かなりグロテスクな場面も出てくるのに、それさえも美しく感じさせる手腕はさすが名人という他はありません。
「サイコ系作品は好きだけど、明治の文豪の小説なんてつまらなそう」そんな風に考えているケータイ小説やライトノベルのファンにこそ、読んで頂きたい一作です。

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一房の葡萄 - 善悪を教えてくれる子ども向け作品

青空文庫アプリで読みたい文庫10選

有島武郎作『一房の葡萄』
今年の暑さにはまいりましたが、そのおかげで果物は例年より甘いそうで、食いしん坊の安藤としては喜ばしい限りです。たわわに実ったブドウをニュースで見ていたら、ふと有島武郎作の『一房の葡萄』を思い出したので、ご紹介します。
 
この小説の主人公の少年は、友達の絵の具を盗んでしまいます。もちろん盗みはいけません。ですが、魔がさしてやってしまった場合、周囲の大人の対応によって、本物の悪人になってしまうか、反省して真人間になれるかが決まると思います。
このお話の場合は、女性教師の機転によって後者になります。この女性教師の気遣いや行動が、本当に素晴らしいんです。こんな先生が身近にいたら、きっと非行に走ったり、不登校になる生徒はいなくなると思います。
 
もともとは子供向けの作品ですが、さすがは名人の手によるものです。流麗な文章でつづられる物語りは、大人が読んでも十分に楽しめます。さらに、お子さんがいる方なら、もっと楽しめること請け合いです。ぜひ読み聞かせてあげて下さい。

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父帰る - 就活難にプロレタリア文学

青空文庫アプリで読みたい文庫10選

小林多喜二作『父帰る』
雇用情勢の悪化により、来春卒業予定の高校生の求人倍率は、就職氷河期並みの0.67%まで下がったそうです。就職活動中の学生も大変ですが、すでに就職している人間にとっても、労働環境が厳しいのは同じです。最近になって再びプロレタリア文学が脚光を浴びるのも、当然の流れでしょう。
 
さて、そんなプロレタリア文学を代表する作家と言えば、小林多喜二の名を上げないわけにはいきません。去年、映画化もされ話題になった『蟹工船』も名作でしたが、今回ご紹介する『父帰る』もまた名作なんです。

本作の主人公は産休を理由に、工場を解雇されてしまう女性です。さらに、女性の夫は服役中という最悪な状況です。--とはいえ、この作品は女性の悲惨な労働環境だけにスポットを当てているわけではありません。『蟹工船』同様に労働者たちの支配階級に対する怒りや、労働者でも団結さえすれば勝利を勝ち取れるはずという希望が、生き生きと表現されています。
就職活動中の若者や、妊娠・育児に悩む女性はもちろん、働くすべての方に、ぜひ一度は読んでもらいたい作品です。

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影を踏まれた女 - 暑さ和らぐホラーの世界

青空文庫で読みたい文庫特集

岡本綺堂作『影を踏まれた女』
気象庁の発表によると、今年の夏の暑さは30年に一度の異常気象だそうですね。さらに、この暑さは10月いっぱいぐらいまで続くとか…。
クーラーで涼むのもいいですが、怪談でゾッとして暑さを忘れるのも乙なものです。
そんなわけで、今回ご紹介するのは、岡本綺堂作の『影を踏まれた女』。今の季節に相応しい月にまつわる怪談です。
 
内容は月明かりの美しい秋の夜、嫁入り前の娘・おせきは悪童たちに影を踏まれてしまいます。
当時は「影を踏まれると悪いことがおきる」という迷信があったようですが、ほとんどの人間は信じていません。しかし、当のおせきは気に病むあまり、本物の病人のようになってしまいます。さすがに周囲も放っておけず、医者に診せたり霊能者へ相談するのですが、結局、理由がわかりません。この当たりの描写が、もう怖いんですよ。
自分の大事な人間がどんどん病んでいき、その理由はもちろん、治療法もわからないというのは、本当にいたたまれなくなります。この当たりは、むしろ、現代の方がリアルな恐怖を感じられる気がします。
 
現在、書かれている怪談のようにグロかったり刺激的すぎる表現もなく、淡々とした筆遣いがじんわりとした恐怖感をあおっていきます。現代にも通用するジャパニーズホラーの原点を、ぜひ堪能して下さい。

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